生物学 とは、他の学問とどのように違うのか、その体系はどうなっているのか、を図示してみた。

まず、われわれが目にすることのできるのは、生物の「個体」である。個体と言っても、生物には動物、植物、菌類、原生生物、細菌類といろいろな種類の「個体」がいる。生物学では、現在の地球上にいる様々な生物種を分類するときに、系統発生を踏まえて、分類しようという暗黙のルールがある。系統発生とは、生命の起源以来、どんな系統を辿って、現生生物はこの地上に出現したのか、というその経緯のことであり、進化の過程のことである。
一方、最近の生物学では、生物をミクロに分析していく手法が採用されている。個体の中には、様々な働きを持った「器官(Organ)」が存在する。器官の中には、同じ形や性質を持った細胞が集まって出来た「組織(Tissue)」が存在する。組織には、機能単位である「細胞」が存在する。細胞の中には、様々な働きを担う「細胞内小器官(Organelle)」が存在する。細胞内には、様々な働きを担う分子であるタンパク質、糖類、脂質、そしてDNAやRNAと言った核酸が存在する。
DNAは、多くの現生生物の遺伝子の本体であり、遺伝情報が収められているのだが、生命の起源以来、遺伝情報は、個体の増殖や生殖を通じて、受け継がれてきている。それゆえ、現生生物のDNAの塩基配列の中には、「進化の跡」が刻まれている、と言える。
一方、ある生物種の個体は、様々な様式で、同種の個体や他の種の個体と関係性を持って、生命を繋いでいる。例えば、食う・食われる(捕食被食)の関係である。個体間の関係性に注目し、研究対象とするのが「生態系」である。
現生生物の中で起こっている現象は、進化の中のどこかの時点で出現したはずである。例えば、真核生物に共通している現象について研究しているなら、その現象は、おそらく、20億年前から10億年前の間に確立した現象であり、そのときに何が起こったのか、を研究していることになる。
生物学の研究には、応用分野と基礎分野がある。応用分野では、直接的に人の役に立つ成果が求められる。人は、日々、美味しいものを食べ、病気になることなく、健康で幸せに暮らし、長生きしたいと願っている。それらに、直接的に答えてくれてるのが、医学であり、薬学であり、農学であり、衛生学であろう。そうした、応用分野を支える基礎分野がある。基礎分野の研究成果は、人に直接的に役立つことはなくても、応用分野をより充実し、改善していくための基礎知識となる。
「生物」「生物学」という教科や学問分野が、他の理科の科目と大きく異なる点は、やはり、生物はこの地球上で進化してきたことを学ぶ点にある、と思える。Scienceにおける研究対象で、生物だけが、本当の意味での「進化」を遂げてきた実体である。全ての生物が同じ遺伝暗号を用いている事実は、生命の起源が1つだったことを意味している。その生命の起源以来、遺伝情報が受け継がれ、遺伝情報のコピーを効率よく残すことができた生物種が今日まで生き残ってきたのである。